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(1)赤字とはどの利益をもって赤字というのか?
(2)利益は5段階ある
(3)銀行が最も嫌がる赤字とは?
(4)税理士さんが最も重視する利益
(5)赤字にも良い赤字と悪い赤字がある
赤字とか黒字とか言ってますが、何をもって赤字というのか?
よくわかっていない社長さんが多いです。
もっとも、会計はとてもややこしいところがあって、赤字とか黒字とか言っても、実は利益の種類が5種類もあるのでわかりにくいのです。
一般的には、「赤字」というのは最終利益、つまり税金を支払った残りの最終的な利益である「当期純利益(税引後当期純利益)」が赤字であれば「赤字企業」、これが黒字であれば「黒字企業」といいます。
損益計算書(P/L)の一番最後の利益で見るのです。
ここで利益の種類について説明しておきましょう。
利益は5種類、5段階あるのです。
損益計算書の上から下に説明します。
損益計算書の上から下に向かって以下の利益が並んでいます。
(自社の損益計算書をご覧ください)
①売上総利益
売上高-売上原価(通常でいう粗利)
②営業利益
売上総利益-販売費及び一般管理費(本業の利益)
③経常利益
営業利益+営業外収益-営業外費用(日常的な経営活動による儲け)
④税引前当期純利益
経常利益+特別利益-特別損失(特別な利益と損失を含む利益)
⑤税引後当期純利益(当期純利益)
税引前当期純利益-法人税住民税等(税金を払った最終利益)
この5つの利益があって、最終的に一番下の当期純利益が赤字になると「赤字」企業と言われるのです。
ところが、実は銀行の見方はこれとは違うのです。
銀行が最も嫌がる赤字は、実は当期純利益(最終利益)とは違うのです。
ズバリ結論から言いましょう。
銀行は損益計算書の中で「営業利益を最も重視」するのです。
営業利益とは本業の利益です。
「本業でいくら稼いでいるか?」
ここが、損益計算書で銀行が一番重視する利益なのです。
なぜだと思われますか?
営業利益は、「本業でいくら稼いで、いくら原価と経費を使ったか?」を見ます。
これは、「営業利益で今後この会社は生き残って行く力があるのか?」がわかるからです。
銀行とは「金貸業」です。
お金を貸して「利息」で稼いでいるのです。
しかも、返済期日に貸した金が戻ってこなければ、銀行自体がリスクを負うのです。
銀行はあなたの会社を、
①「稼げる会社か?」と、
②「リスクがない会社か?」
この2点を見ているのです。
銀行は間違っても、決してあなたの会社のパートナーなどではありません。
自行のことだけを考えているのです。
先ほどの①「稼げる会社か」確かめるには、損益計算書では営業利益が一番よくわかるのです。
ちなみに税理士さんは、どの利益を重視すると思いますか?
ずばりお答えしましょう!
「税引き前当期純利益」です。
税理士さんは「税金を計算する」ことが本業です。
税金を計算する表は税務申告書の「別表(べっぴょう)」という表です。
これは国税庁の様式に則った複雑な表です。
税理士さんの本業は、この「別表」を作成して正確な税金を計算することなのです。
決算書の前についている、一番上が青い表紙の表が別表の1です。
別表1~始まって別表はずーっと続きます。
この別表を作成するためには「決算書」が必要なんです。
そして決算書のどの数字が特に必要かと言えば、
損益計算書の「税引き前当期純利益」なのです。
税理士さんが作成する「別表」は、この損益計算書の「税引き前当期純利益」をベースにして作成するのです。
だから、税理士さんが一番重視するのは、この「税引き前当期純利益」なのです。
ここで皆さんは疑問に思いませんでしたか?
「税理士さんが重視する利益と、銀行が重視する利益が違う」
ということです。
つまり、税理士さんに決算書まで丸投げしておまかせしていると、
銀行にとって合格点がつけられない決算書ができる可能性があるのです。
だから、税理士さんに丸投げしてはいけないということですが、
この件に関しては別のブログで触れているのでここでは、ここまでに留めておきます。
そろそろこのブログの結論です。
赤字、赤字といっていましたが、
赤字にも「良い赤字」と「悪い赤字」があるのです。
何をもって良い、悪いと判断するのか?
は目的によって違います。
お金を借りたいなら、営業利益は黒字にしなければなりません。
税金をできるだけ少なくしたければ、「税引き前当期純利益」が少ない方が良いのです。
もちろん、脱税は絶対にいけません。
しかし適切な売上・経費を計算しているということを前提として、
「損益計算書のどこに、収益(売上と売上以外の収益)と費用をいれるのか?」
の問題で、銀行の対応は変わってくるのです。
もちろん、赤字はよくありません。
赤字より黒字の方が世間の評価も上がって、会社にも体力が蓄積されて良いに決まっています。
しかし、今回のコロナ禍のように、外部の要因でいつ何時、赤字になる時があるかもしれません。
そんな時には会社を再建しなければなりません。
銀行融資を最大限に引っ張らなければなりません。
そんな時には、法令順守の範囲内で、
「最大限自社にとって有利となる決算書を作成できるか?」
で、運命が変わる時もあるのです。
ということで、最終的に社長さんにお伝えしたいことは、
会社の顔である「決算書」を他人に任せるのではなく、
「自分で作成・管理」しましょう!
ということなのです。
今回は以上です。
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